私は、厳しい資金繰りをしながらも、事業経営を頑張っている会社社長と面談することが多いです。
融資を受けられるだけ、めいいっぱい受けてから、計画通りの利益が上がらず、
返済に窮する会社は結構あります。
借りる時は「借りられるなら借りられるだけ借りておこう」と思い、
借りられるための事業計画を立てたのでしょうか。
そのときのことは、その時の社長とその時に関わっていた専門家にしかわからないし、
その専門家だって本当にわかってやっていたのかどうかもわかりません。
私が借入の相談を受ける時は、
例えば1000万円を5年で借り入れるならば、
1年につき最低200万円以上の営業利益が出る計算で事業計画が立つかどうかを検証します。
借入金は収益ではないので、返済も経費ではなく、利益から返済するので、
返済分を賄える利益を確保する必要があります。
本来、事業継続のための投資や利息費用も必要なのでその分を見込んで利益を出しますが、
大抵は減価償却もあるので、その程度で見込みを出すのが通常です。
(減価償却がない場合はもっと多くの営業利益を出す必要があります。)
借入金はテコと同じ原理です。
通常の手持ち資金で頑張っていても大きなリターンは見込めませんが、
テコを使い(つまり、融資を受け)、
それで通常の手持ち資金による活動よりも多く活動したり、
リターンを見込んだ設備投資をすることによって、
通常の手持ち資金での活動では得られないリターンを得るのが融資の目的です。
小さな力で頑張り続けるのではなく、
テコの大きな力(借入金)を加えて、大きなリターンを得るのです。
しかし当然ながら、テコ(借入金)の返済を賄えるだけのリターンがなければ、
そもそもそのテコは使ってはいけない、もしくは、そのテコの大きさを変える必要があります。
どんな事業計画を立てたとしても、その計画期間に何が起こるかは誰にもわからないのです。
もしかしたら災害が起こるかもしれませんし、悪意のある取引先によって回収不能になるかもしれません。
しかし、自社がコントロールできる活動は、できるだけ計画に落とし込み、
あとはひたすら実施と改善を重ねて結果(利益)を出していくのです。
ですから事業計画は、実現可能性のあるもの、そしてテコに見合うものである必要があります。
「計画を立てたけど、形になったものがありませんでした」では自社も銀行も不幸になってしまいます。
その実現可能性の高い計画を策定するため、自社の現状をしっかり把握することが大切なんです。
ちなみに、昨日、関与先の社長と話していて、
私が昔、いまの仕事の師匠とゴルフを一緒にしたときのことを思い出しました。
せっかちな私が、グリーンの上で「えいっ!」とパターでボールを叩き、
そのボールがホールをオーバーしたのを見て、師匠が言いました。
「あのな、社長は「えいっ!」とやってもいい。
チャレンジしなければならない時があるからだ。
しかし、我々、社長を支援する側は、「確実」でなければならない。
ボールがオーバーするよりも、
ホールまで距離が足りなかったとしても、
何度打ったとしても、
ボールを確実にホールに近づけて入れるんだ。」と。
我々支援者は、社長の決断に「それは難しいです(無理です)」と言わなければならないこともあります。
それは、実現可能性、つまり確実にできる路線を守り、会社を守るためです。
それでも社長がやると判断したならば、今度はできる限りの環境整理に努めます。
融資を受ける時、経営改善計画を立てる時、どちらも実現可能性の高さが必要とされるのです。
もしも計画通りに返済できなかったときは・・・、
事業再生の専門家の知恵をもって支援させていただいています。
その話はまた今度。
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