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2018年9月16日日曜日

【企業法務】株主の総入れ替えは可能か?不可能ではない。

こんにちは。瀬戸川です。


昨日は、私が持っている会社法の本のうち、
株式に関する部分をひっくり返して、調べ物をしていました。



その中に、本日のブログタイトル「株主の総入れ替えは不可能ではない」との記述があったので、検証してみようと思います。


まず、「株主の総入れ替えが不可能ではない」とする理屈は、以下の通りです。


①会社が株主から強制的に株式を買い取る取得条項付株式という法制度がある。

②その方式は次の3点。
 ・「一定の事由が生じたことを条件として、発行済み株式ないし一部を取得することができる株式(取得条項付株式)」
 ・「一定の事由が生じたことを条件として、ある種類の株式を買い取ることができる種類株式(取得条項付株式)」
 ・「会社が株主総会の決議によってある種類の株式全部を買い取ることができる種類株式(全部取得条項付種類株式)」

取得条項付株式は、一定の事由または一定の日を事前に定款で定めることになっており、その事由が発生すれば自動的に取得することとなる。
 全部取得条項付株式は、株主総会で取得するかどうかを決議すれば、会社が取得することとなる。)

④配当可能額の制限はあるが、例えば債務超過状態などで取得額がゼロ円であれば実行可能であるし、場合によっては、株主が一人もいなくなる事態となる。

⑤④のタイミングで同時に新株の募集を議決することができれば、株主の総入れ替えができることとなる。



これをとある会社に当てはめて、具体的に検証してみます。


・X社・・・普通株式のみ200株を発行しており、
      株主は100株(A氏)、60株(B氏)、40株(C氏)
      X社は大幅な債務超過であり、株価はゼロ円。

①X社が臨時株主総会にて、以下の5点の議案についての可決賛成を同時に取る。
 ⑴全部取得条項付種類株式を定款に定める定款変更案
 ⑵既存の株式を全部取得条項付種類株式とする定款変更案
 ⑶同時に、全部取得条項付種類株式を取得するのと引き換えに交付する金銭等の価格の決定方法を定める旨(※金銭なので、金銭に限りません)
 ⑷全部取得条項付種類株式を取得する旨
 ⑸全部取得条項付種類株式を取得するのと引き換えに新株を募集する旨の定款変更案
 
 ※会社法第107条〜第116条の定めに該当。
  特に、上記⑴と⑵の議決については、株主全員の同意を必要とします。(会社法第110条)

②もしも反対する株主がいたとしても、株式買取請求権が認められているので、それをもって同意を求める。
 ただし、買取価格については配当制限(財源規制)がかかるため、純資産額が300万円を下回る場合には1円以上で買い取ることはできません。
 また、債務超過の場合は、通常、株価はゼロ円となりますが、キャッシュフローベースで株価を決める場合はゼロ円とはなりません。
 しかし、債務超過の会社は、株価をゼロ円としなければ配当制限である純資産額が300万円を下回るので株式の買取ができません。
 まあ、その場合は1円で買い取りをして、取締役が補填責任を負えばいいということになるかもしれませんが。
 どちらにしろ、ここでは買い取り請求に応じることができるでしょう。
 
②①の議決の結果、全ての普通株式は全部取得条項付種類株式となり、それは①の⑷によって会社に強制的に取り上げられ、①の⑸によって新たな株式(株主)の募集をするということになります。
この一連の決議によって、株主の総入れ替えが可能だということです。

ただ、理屈上は可能でも、実際の運用でこれができるかどうかは様々な状況を勘案しながら慎重に進めなければなりません。



なお、例えば一部の少数株主の議決権(結果的には株主そのもの)を排除するスクィーズアウトには、「株式併合」という手法もあります。
X社の場合、1株を従来の50株にしてしまえば、40株しか持っていない株主C氏は1つの議決権も持てなくなります。(端数株式)
そこで、C氏はX社に対して、自身の保有する株式を買い取れと請求することができ、C氏は株主の地位を捨てることになるというわけです。


また、1株を従来の30株に併合した場合は、議決権の保有割合が以下の通りに変わります。
A氏100株(50%)→3.3株=議決権3個(50%)
B氏60株(30%)→2株=議決権2個(33%)
C氏40株(20%)→1.3株=議決権1個(16%)

B氏の議決権の割合が上がり、C氏の議決権の割合は下がるわけです。


さて、これらの知識や技術をどこに活かせるでしょうか。
それは秘密です。

それでは。





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