スポンサーリンク

2020年3月2日月曜日

【建設業】元請(取引先)の与信調査のポイント

こんばんは。瀬戸川です。
すっかりブログから遠ざかっていました。。。

年明けから2月までのバタバタ期も少し落ち着き、ITツールを活用して事務所内のタスク整理もしつつ、良い感じの3月のスタートを切っています。
しかし、2月まで本当に時間がなくて、お客様への訪問はしていても、協力先にあいさつのための訪問もできてなかったので、3月からはちょっと立て直したいと思います。

さて、2月最後の仕事は、顧問先企業の元請である建設会社(A社)の与信調査でした。

先月、顧問先企業の社長から、「A社(東京都知事許可の建設会社)から売掛金のサイトを伸ばしてくれと連絡があった」という連絡を受けました。
2月末は大臣許可申請や経営事項審査の予約で都庁を訪れる予定でしたので、それらの仕事を終えてから、都庁の閲覧室に行き、A社の建設業許可申請書や5期分の決算変更届を閲覧謄写してきました。
※他の業種では(きちんと決算公告をしている会社は別として)信用調査会社のデータくらいしか与信情報を集めることはできませんが、建設業許可業者は、その財務情報や工事経歴書や許可申請書が許可行政庁で公開されており、自由に閲覧謄写することができます。また、経営事項審査を受けている会社であれば、ネット上でその評点や財務情報を見ることもできます。

5期分の財務諸表を並べてわかることはいろいろありますが、中でも私がいつも注目しているのは以下の項目です。

①売上高(完成工事高)と粗利額と粗利率の推移

②その売上高の推移に比較して、売掛金(工事未収入金)の推移
 ・・・平均月商に比例して増減しているか、それとも関係なく増えたり(滞留したり)、減ったり(回収サイトが短くなったり)しているか。

③妙な貸付金や仮払金の有無と推移
 ・・・使途不明金や本業以外でお金を支出していないか。

④短期借入金の有無
 ・・・内容は役員借入金ならいいのですが、長期で借り入れが困難となったために短期を借り入れているような要素がないか。

⑤買掛金(工事未払金)や未払金の推移
 ・・・材料費や外注費の月平均と比例して増減しているか、それとも関係なく増えたり(支払いが滞る)、減ったり(現金払いに切り替えさせられている)しているか。

⑥長期借入金の推移
 ・・・売上高や現預金の推移と比べて、そのバランスはどうか。
    返済額(減少額)に見合った営業利益が出せているか。
    通常は5~7年で返済するが、それに見合った減少額となっているか。なっていなければリスケジュールを実行している可能性が高い。

⑦役員借入金の有無
 ・・・長期借入金で賄えない部分があるか、または資本金と同視できる内容のものか。

⑧純資産の部が、債務超過かどうか。

⑨借入金の額と支払利息の額の比較
 ・・・返済額(減少額)に比べて支払利息が異常に多い場合は、通常の金融機関から借りられていないという予測が立つ。

⑩役員報酬と役員数
 ・・・役員一人当たりの報酬はいくらか。

⑪労務費と従事者数
 ・・・従事者一人当たりの給料はいくらか。正社員とアルバイトの割合の予想。

⑫工事経歴書に書かれた元請企業の大きさに比べて、適正な運営ができているかどうか。




で、今回のA社ですが、ざっくりいうとこんなことがわかりました。

③の長期貸付金が異常に大きな金額でした。
(誰やどこに貸し付けているのでしょうね。返済してもらう目途のあるものなのでしょうか。)

⑥の長期借入金の減少額に見合った営業利益が出せておらず、通常の返済期間で割った返済額に見合った減少になっていないことから、もう何年もリスケジュールを実行しているだろうということもわかりました。

⑧の純資産の部は大幅な債務超過で、その債務超過に陥った原因も損益計算書の推移から読み取れました。

A社のホームページには立派なことが書かれていましたが、中を覗いてみるとまったく違うものですね。



結果、顧問先社長への報告は「A社との取引は、すぐにやめるべきか、回収の担保をつけてから(前受金など)受注するか、徐々に縮小していくべきかを決めた方がよい」ということになりました。


ちなみに、いままで、売掛金の回収不能によって、弁護士につないだ案件も2社あります。1社は全額回収できましたが、もう1社はまだ決着がつかないようです。
弁護士に依頼して全額回収できたのは結果オーライですが、弁護士費用や裁判所に払う諸費用もかかりますし、一定金額を法務局に供託しなければなりません。
できればそうならないために、与信管理をして、取引のバランスをコントロールしていくことに努めたいものです。